Quick Answer

AI臭を削るレビュー版は、6本のブラインド比較で全て選ばれた。ただし語彙・構造を同時に変えたため、勝因が語彙かどうかは実は分離できていない。読みやすさへの疑いが今回の気づきだった。

なぜこの検証をしたのか?

2026年6月8日、AIで生成した6本の記事を2人でブラインドレビューしました。

きっかけは、AIで作った文章をそのまま公開したときに、読み手にどう見えるのかを確認したかったことです。

今の問題は「AIで書けるか」ではなく、「その文章を人に見せて大丈夫か」です。

文章がそれっぽく整っていても、読んだ人に「なんとなくAIっぽい」「この人が本当に考えている感じがしない」と思われると、内容まで軽く見られることがあります。

この記事では「AIっぽい」を、AI生成かどうかの真偽ではなく、読者が「型っぽい」「一般論っぽい」「本人の判断が薄い」と感じる違和感として扱います。

そこで今回は、同じテーマで2種類の記事を作りました。

  • 通常のAI出力に近い記事
  • 読みやすさと具体性を見直した記事

見直し版では、AI文に出やすい前置き、抽象語、型っぽい構成を減らし、実際の判断や制約が伝わるように調整しました。AI検出ツールで判定したわけではありません。

参考にした公開リポジトリは、次の2つです。

どちらも、AI文に出やすい言い回しや構造のクセを減らすための考え方をまとめたものです。今回は、それらをそのまま使ったわけではありません。英語やインドネシア語向けのルールも含まれているため、日本語の記事にそのまま当てはめると不自然になる部分があります。

そこで、今回は「前置きを減らす」「抽象語を具体化する」「長い段落を分ける」「読み手が判断できる材料を入れる」という観点だけを取り出し、日本語の一般向け文章に合わせて見直しました。

見直し版では、語彙・リズム・型っぽい構造・空虚な形容詞の4点をまとめて手直ししています。この「まとめて変えた」という点が、後述する落とし穴につながります。

どちらがどちらかは伏せたまま、2人にQuickレビューしてもらいました。

何を比較したのか?

テーマは3つです。

  1. AIでプレゼン資料作りはどこまで楽になるか
  2. AIに仕事を頼むとき、うまくいく人と失敗する人の違い
  3. 家族や同僚にAI活用を説明するときの失敗例

どれも、技術に詳しくない人でも読めるテーマにしました。

狙ったのは、検索向けに文章を整えることだけではありません。AI活用の記事として読んだとき、「できること」と「危ないこと」を分けて考えている文章に見えるかを見たかったからです。

どうやってレビューしたのか?

最初は、6本の記事をそのまま読んでもらう想定でした。

でも、すぐに問題が出ました。

文章を読むのが重い。

1000字前後の記事でも、6本並ぶと普通に疲れます。しかも、気になる箇所をチャット欄に貼って指摘するのも面倒です。

そこで、簡単なHTMLのレビューUIを作りました。

QuickレビューUIのスクリーンショット

この画像で見てほしいのは、A/B本文の細かい中身よりも、長文を全部読ませずに「冒頭」「AIっぽさ候補」「信用候補」を並べて確認できる構造です。

画面では、A/Bの正体を隠したまま、次の3つだけを先に見られるようにしました。

  • 冒頭
  • AIっぽさ候補
  • 信用候補

全文は必要なときだけ開けるようにしました。

レビューでは、各テーマごとに「Aを採用」「Bを採用」「どちらも微妙」を選び、必要なら短いメモだけ残します。

このUIにしたことで、全文を精読しなくても、最初の違和感や読みやすさを短時間で見られるようになりました。

結果はどうだったか?

今回の範囲では、選ばれた文章に偏りが出ました。

2人が3テーマを見たので、合計6票です。

ただし、これは少人数のQuickレビューであり、一般化できる結果ではありません。

比較対象 採用数
通常版 0票
見直し版 6票

今回の条件では、3テーマすべてで2人とも見直し版を選びました。

通常版が悪い文章だった、という話ではありません。どちらもAIで作った文章です。そのうえで、今回の読み方では、読み手が判断しやすい構造にした方が選ばれました。

ただし、ここで強く言いすぎるつもりはありません。

これは統計的なA/Bテストではありません。レビューしたのは2人だけです。しかもQuickレビューなので、全文を細かく精読した結果ではありません。検索順位やCVRを測ったわけでもありません。

なぜ「AI臭が消えた」と言い切れないのか?

ここが、公開を止めていた本当の理由です。

見直し版で変えたのは、語彙だけではありません。語彙・リズム・型っぽい構造・空虚な形容詞をまとめて手直ししました。つまり比較できたのは「レビュー一式を適用した版」と「適用していない版」であって、語彙を変えた効果だけを取り出したわけではありません。

レビューのメモには「箇条書きや改行があって読みやすい」という理由が多く出てきました。これは実際にあった感想であり、無視すべきではありません。ただし、語彙だけ戻して構造は見直し版のままにしたらどうだったか、逆に構造だけ戻して語彙は見直し版のままにしたらどうだったかは、今回のレビューでは確認していません。

なので、正しい書き方はこうです。

対象とした6本では、2人の評価者がすべてレビュー版を選んだ。選好理由を掘り下げると、箇条書きや改行など読みやすさに関する説明が多かった。ただし語彙と構造を同時に変更したため、それぞれの寄与は分離できていない。

「読みやすさが主因だった」ではなく、「読みやすさが主因ではないか、という仮説が得られた」という位置づけです。この記事のタイトルも、当初は「AIっぽい文章はどこでバレるか」でした。ですが今回測ったのは文章の出自を見抜く実験ではなく、2案のうちどちらが選ばれるかという選好の実験です。タイトルと実験内容がずれていたので、書き直しました。

大規模統計と何が違うのか?

このドラフトを寝かせている間に、似たテーマを扱う記事を見つけました。逆瀬川ちゃんのほーむぺーじ「生成AI前後のQiita記事執筆スタイル変化分析」です。Qiitaの記事(2019〜2026年の各年8月分、70,524件取得・50,731件を分析)を対象に、ChatGPT登場前後で文体がどう変わったかを統計的に検証しています。

要点は、比喩的な語彙(入口・土台・道具)や確認検証系の語彙(実測・疑う・照合)が実測ベースで有意に増えている一方、「〜しましょう」のような従来言われる”AIっぽい定型表現”はむしろ減っている、というものでした。

自分たちの実験は「読みやすさが効いていて、語彙はそこまで関係ないかもしれない」という手応えだったので、一見「語彙も変わっている」という向こうの結果とぶつかるように見えます。ですが、並べてみると答えている問いがそもそも違いました。

観点 逆瀬川氏の統計分析 今回のブラインド比較
問い 時代によって記事の語彙や構造は変わったか 通常版とレビュー版のどちらが選ばれたか
比較対象 異なる時期に投稿された記事群 同じ題材について用意した2つの版
直接観察したもの 語の出現頻度や書式の変化 評価者の選好と、その理由
それだけでは分からないもの その特徴が嫌われるか、AIが原因か 語彙変更と構造変更のどちらが効いたか

「時代とともにある語彙が増えた」ことと、「その語彙があると読者に嫌われる」ことは別の主張です。ある読者が「この言い回しはAIっぽい」と感じながらも、「必要な情報を見つけやすいから、この記事を選ぶ」ことは普通に両立します。向こうの記事も、箇条書きや太字の増加を語彙と並べて分析しており、「語彙 vs 構造」という対立でもありませんでした。

なお、この記事は個人ブログの統計分析であり、査読済み論文ではありません。著者自身も「AI執筆と人間の模倣は区別できない」「削除されずに残った記事にバイアスがある」「8月分のみで季節変動は除外できていない」と限界を明記しています。時代とともにある語が増えたからといって、その語を使った個々の記事がAIで書かれたと決めつけることはできません。ここは「AI以降に増えた語」であって「AI判定ワード」ではない、という区別で読むのが妥当です。

「AIっぽさ」と「読む価値」は同じ軸なのか?

ここまでの整理で、そもそも「AIっぽさ」を1つの尺度として扱っていたこと自体が雑だったと気づきました。少なくとも次の4つは分けて考える必要があります。

軸 確かめたいこと
実際の出自 AIで生成・編集された文章なのか
AIらしいという印象 読者がAIで書いたように感じるか
読みやすさ・理解 必要な情報を探せるか、内容を正しく理解できるか
総合的な選好 どちらの記事を読みたい、採用したいと思うか

今回の「レビュー版を支持した」という結果は、この4軸のうち総合的な選好しか直接測れていません。「読みやすかった」という感想も、実際に内容を正しく理解できたかを測った結果ではなく、あくまで感想です。

だとすると、レビューガイドが本当にやるべきことは「AIっぽい単語を消す」ことではなく、この4軸を混同しないことかもしれません。人が好む書式(箇条書き・改行)をAIも多用するようになった結果、「読みやすい書式」と「AIらしく見える書式」がたまたま重なっているだけ、という可能性もあります。この記事の6本の結果だけでは、そこまでは確定できません。

ただし、誰が読むかで結果は変わる

ここは注記しておきたいです。

今回レビューしてもらったのは、一般読者寄りの読み方です。毎日論文を読んでいる人、技術ブログを読み慣れている人、業務で仕様書を読む人が評価したら、違う結果になった可能性があります。

たとえば、文章量が多いことを「丁寧」と見る人もいれば、「冗長」と見る人もいます。

箇条書きが多い文章を「読みやすい」と感じる人もいれば、「浅く見える」と感じる人もいます。

技術者向けの記事なら、むしろ淡々とした説明、前提条件、再現手順、ログ、バージョン情報の方が信用される場面もあります。

なので、この結果を「どんな文章でも同じ直し方をすれば良い」とは言いません。

公開前レビューで、結局何を見ればいいのか?

今回分かったのは、一般向けの記事では、読み手の負荷を下げる構造がかなり効きそうだ、ということです。ただし「AI臭い語彙を消せば良い」という単純な話ではありませんでした。

レビューガイドを、禁止語リストから次の基準に置き換えます。

  1. 冒頭で一般論を長く書かない
  2. できることと、できないことを分ける
  3. 長い段落が続いていないかを見る
  4. 読む人が判断できる材料を書く
  5. 成果保証に見える表現を避ける
  6. 事実・適用条件・例外・再現手順が、読みやすくする過程で削られていないか

6番目を追加したのは、今回の整理で見えたリスクです。「実測」という語を削るかどうかより、何をどの条件で測ったのかが書かれているかを評価する。「土台」という比喩も、その後に具体的な役割が説明されていれば、単語だけを理由に消す必要はありません。読みやすくするために、技術的な条件まで削ってしまうのが一番まずいパターンです。

AIで作った文章をそのまま出してよいか不安な人は、文章の用途、読者、避けたい印象を先に整理しておくと見直しやすくなります。プロフィール文、記事下書き、提案文でも、ここは最初に確認したいところです。

「AIでできます」と言い切るより、「ここまではAIで楽になるが、ここは人間が確認する必要がある」と書いた方が、読む側は安心しやすい。

自分の文章で試すなら?

同じことを自分の記事や提案文で試すなら、大がかりなA/Bテストは要りません。

やることはシンプルです。

  1. 同じテーマで2パターンの文章を作る
  2. どちらがAIっぽいかを伏せる
  3. 冒頭、読みやすさ、信用できる箇所だけを見る
  4. 全文を読む前に、どちらを採用したいか決める
  5. 後から理由を短くメモする

ポイントは、文章全体を完璧に採点しようとしないことです。

実際に読まれる場面では、読者も全文を丁寧に採点してくれるとは限りません。冒頭で引っかかる、段落が重い、何を信じてよいか分からない。そう感じた時点で、読むのをやめる人もいます。

だから、最初の確認では「正しい文章か」よりも、「読む人が止まらずに判断できるか」を見た方がよさそうです。

そのうえで、公開前の最後に事実関係、数字、言いすぎ、成果保証に見える表現を確認する。この順番の方が、AIで作った文章を現実の場に出しやすくなります。

もし語彙と構造それぞれの効果を本気で切り分けたいなら、同じ原稿から「原文」「語彙のみ変更」「構造のみ変更」「両方変更」の4パターンを作る2要因デザインもあります。ただし、これは追加検証であって、今回の記事を公開するための必須条件ではありません。

今回の検証から持ち帰ること

今回持ち帰りたいのは、禁止語リストではありません。

もっと言えば、「レビューは選ばれた」という勝率100%の数字でもありません。

持ち帰りたいのは、自分たちが測定できたことと、測定したつもりになっていたことを分けて見る視点です。

  • 長い段落が続いていないか
  • 箇条書きを入れるべき場所があるか
  • 読者が判断できる区切りがあるか
  • 相手への配慮が見える文があるか
  • 「できること」と「確認が必要なこと」が分かれているか
  • 上記を直す過程で、事実・適用条件・再現手順を削っていないか

AIっぽい文章を直すというと、つい語尾や言い回しを直したくなります。今回の小さな検証でも、最初はそう見えました。でも掘り下げると、語彙と構造をまとめて変えていたせいで、本当の勝因はまだ確定していません。

大規模な統計分析は、この記事への反論ではありません。むしろ、自分たちの実験が何を測れていて、何を測れていなかったかに気づかせてくれた材料でした。

AIで作った文章を人に見せる前には、「AIっぽさを消したか」ではなく、「読む人が止まらずに判断でき、かつ必要な情報が残っているか」を先に確認しておきたいです。


本記事は、AIで作成した6本の文章を、筆者ともう1名がブラインドでQuickレビューした結果をもとに書いています。比較対象はいずれもAI補助で作成した文章であり、人間執筆とAI執筆の判定実験ではありません。また、語彙とレビュー版の選好の関係は、今回のデータからは因果関係として確定できていません。